ニュース:TVアニメ『呪術廻戦』~呪術の世界を彩るハイブリッド・ミュージック~ 作曲家陣が劇伴制作の裏側を語る!音楽:堤博明・照井順政・桶狭間ありさ with 小林健樹(音楽プロデューサー) オフィシャルインタビュー公開!

現実と非現実が境界無く混ざり合う『呪術廻戦』の世界。その独特な時空間をアニメで表現する際に大きな役割を担っているのが“音楽=劇伴”だ。今回の劇伴は3人の作曲家――堤博明・照井順政・桶狭間ありさの競演によって制作されている。

虎杖や伏黒、釘崎、五条たちの戦いを彩る劇伴は、どんなイメージから生み出されていったのか?作曲家チームに音楽プロデューサー・小林健樹を加えた4名に語ってもらった。


<作曲家3人体制になった理由>
ーー今回は3名で音楽を分担して担当するという珍しいスタイルですが、どういう経緯でそうなったのでしょうか?
小林健樹(以下、小林)「芥見先生交えて打合せをさせて頂いた時に、先生からはビリー・アイリッシュやスタイリッシュな方向を提示されました。それにプラスオンで朴監督からはヒップホップやロックが欲しいと希望がありましたので、アニメにも寄り添いながら個性的な曲が作れる、堤さん、照井さん、桶狭間さんに託すことになりました。私は、堤さんとは『Dr.STONE』で、照井さんとは『宝石の国』の主題歌で、桶狭間さんとは朴監督の『The God of High School』でそれぞれご一緒したことがあるので、いただいたオーダーの内容でこの三名にお願いできれば、作品に寄り添いつつ化学反応を起こしておもしろい音楽になるのでは、と考えたんです。」

ーー3人での分業と聞いたときは、それぞれどんなお気持ちでしたか。
堤博明(以下、堤)「自分は『Dr.STONE』のとき等に複数の作家での制作を経験したのですが、お互いに刺激をもらえたりして楽しく、成長出来る実感があったんです。だから今回も、他のお二人の感性を吸収し、盗ませてもらおうと(笑)。それに(分担することで)自分が担当する楽曲をより尖らせて作ることができるので、それもチームで劇伴を担当する強みだなとも思いました。」

照井順政(以下、照井) 「僕はまず劇伴の仕事自体、この作品がはじめてだったので。はじめての作品を3人でやらせていただけるのは、ありがたかったですね。いろいろと勝手がわからない部分もあったし、自分個人の作品の作業と並行してどういう進めていけばいいのかという面でも、経験豊富な堤さんや桶狭間さんとご一緒できて心強いなと思いました。」

桶狭間ありさ(以下、桶狭間) 「私も、はじめて「3人でやります」と聞いたときは「すごく楽しみだな」と思った記憶があります。堤さんはたくさん経験をお持ちの方で、劇伴も多くの作品に参加していらっしゃいますし。照井さんはご自身のバンドや歌モノの作曲でキャリアを積んでいらっしゃって、事前に楽曲を聴かせていただいたのですが、おもしろい曲ばかりで。早くこのお二人と曲を作ってみたいなという思いが、大きかったと思います。」

ーーどの曲を誰が担当するかという分担は、どのように決まったのでしょうか?
小林「先に監督から、それぞれのキャラクターに対してどういう方向性の音楽にしたいか、ご提案をいただいていたんですよ。たとえば「五条だったらEDM」とか。それをヒントに、各作家さんが「それだったら自分が得意だから」みたな感じで選んだり。」

堤「たまに小林さんから「堤さん、こういう曲はあまり書かなそうだから、逆にどうですか?」って振られたりもしましたよ。」
小林 「それもありましたね(笑)。得意なものだけお願いするよりも、ときにはあえて外すほうが、意外とおもしろいものができるんじゃないかと。創作なのでチャレンジしてからでも良いし、またこの3人だからお願いできたのかなと思っています。」

<ハイブリッドな音楽世界>
ーー作曲をはじめる際、ます最初に心がけたことはありますか。
堤「作家チームと朴監督との最初の打ち合わせで、監督からいただいた「音楽だけ聴いても残るような強さがほしい」というオーダーが印象的でした。劇伴は映像や台詞、効果音のことを考えて音を調整したり間引いたりすることが基本的な考え方としてありますが、そのオーダーを聞いて、自分が思いつく限りの『呪術廻戦』の世界に対するアイデアを、全て詰め込んでみようと。朴監督もきっと、それを受け止めてくださるだろうなと思えたので。」

照井「今、堤さんがおっしゃったことももちろんですが、自分のようにちょっと違う畑の人間を呼んでいただいたということは、やや刺激的な部分、特異な要素を持ち込むことを求められているのだろうなとも思ったので、王道の劇伴とは違うエッセンスを意識した作曲も心がけました。」

桶狭間「原作の芥見先生や、自分自身も含めた読者の方の思い描く世界観の表現をうまくできたらいいなと思いました。たとえばシンセを使って、呪いの気持ち悪さを表現するときは、思いきり気持ち悪く。かっこいい曲なら、とことんかっこよさに突き抜けられるように。振り切った曲にしようと意識して作っています。」
ーーサウンドや曲調についての全体的な方向性を、みなさんで話合った部分もあるのでしょうか?

堤「自分が最初に陥ってしまったんですが、ちょっと和風にしすぎちゃったんですね。録音に使う楽器や編成を話し合うときに、「和をそのまま表現するというより、エッセンスとして入れる方向でお願いします。」と、小林さんから修正が入りました。『呪術廻戦』独特のハイブリッドな世界を作れる楽器の組み合わせを見つけるために、試行錯誤しましたね。」

小林「和楽器はシンセのサンプル音源でちょっと使っているくらいで、レコーディングでは、いわゆる日本の民族楽器は使用していません。和に聞こえる笛の音も、実はアイリッシュフルートなんですよ。」

堤「多分みんな意識的に、特定のジャンルに寄せないようにとしていましたよね。」

照井「それはありました。特定のジャンルにはめるというよりは、ハイブリッド感というか、いい意味の新しさ、いろいろなフレーバーを混ぜることで聴いたことがないイメージになるように意識していました。」

<キャラクター曲に込めたイメージ>
ーーメインキャラクターそれぞれをイメージした曲は、キャラクターごとに分担されたとのことですが。
堤「虎杖に関しては僕が担当しました。あと、東堂、宿儺をイメージした曲も作りました。東堂のコーラスは私と、照井さん、桶狭間さん、小林さんが参加していて、とても思入れが強く、朴監督もとても喜んでくださった曲ですね。 キャラクター曲の中で最初に作ったのは虎杖の曲です。爺ちゃんとのやりとりがさりげないながらも強く印象に残っていたので、その温度感を曲として広げていくところからスタートしたんです。また虎杖は、考え方などはシンプルだけど芯が強い少年という印象を受けたので、メロディは少ない音数で。そんな彼を取り巻く非日常感を、様々なサウンドで表現し、ちょっと不思議な世界を作ろうと考えながら仕上げていきました。」

ーー虎杖本人は素直な少年ですが、彼を取り巻く状況が特殊すぎるというか。
堤「その状況に自ら飛び込むことを決意して、迷いながらも答えを見つけて生き抜いていくことができるんですよね。そんな感覚を、芯があるメロディを中心に多様な音色が広がっているという曲調で表現してみました。」

ーー照井さんの担当は?
照井「伏黒ですね。伏黒は、まずは正統派の二枚目というか、ストレートにかっこいいキャラクター。それこそジャンプを読んでいる若い人たちが「わあ、かっこいい」と素直に思う正統派のキャラクターかなと感じたので、曲もまずはそういう二枚目感をしっかりと表現したいと思いました。」

ーー二枚目感は音楽でどのように表現したのでしょうか?
照井「どうですかねぇ……(笑)。まあ、あまり雰囲気によりすぎないというか、強いメロディや強い楽器の音、あとは疾走感があって複雑ではないけれど突き抜けていくようなリズム、そういうところは意識しました。ただ、伏黒はただ二枚目なだけではなくて、実は苦悩を抱え込みすぎてしまったり、秘めた“狂気”のようなものも持っていたり、という印象を持ちました。ですから、今言ったような二枚目感をまずは目指しつつ、そこから狂気に振ったサウンドや、心情に寄った感傷的な曲に分岐していくようなイメージで作っていきました。」

ーーでは、桶狭間さんは?
桶狭間「私の担当は真人と、あとは釘崎の曲ということではないのですが、彼女がメインのシーンをイメージした曲も担当しました。」

ーー真人の曲はどんなイメージで?
桶狭間「“性格が悪い曲”を作ろうと思いました(笑)。いろいろな人々の想いによって作られた呪いだということは原作を読んで知っていたので、様々な感情が入り乱れるイメージを意識しつつ、やはり性格の悪さをいちばんに出したいなと思って。特にメロディや音色でそういったイメージを、静けさの中のどす黒さみたいなものを表現できたらいいなと思い、“嫌な奴”感を意識して作っています。」

<力の入った注目の楽曲>
ーーそれぞれの担当の中で「力が入った」「これは手応えがあった」という曲は?
堤「PV第2弾でも使われているバトルをイメージした曲です。一番最初にこの『呪術廻戦』のために書いた曲ということもあり、力が入りすぎちゃってまとめ上げるのに苦労しましたが(笑)。PVに使われるということも想定していたので、派手にしようという意識も他の曲より強かったです。ロックだったり、ラップだったり、『呪術廻戦』の世界のちょっとドロドロした部分をシンセやアイリッシュフルートで表現したり、エスニックコーラスも入っている。自分の曲の中では一番、ジャンルに捕らわれないハイブリッド感が出せていると思います。『呪術廻戦』全体を象徴するような曲として仕上げられたのではないかなとも思いますね。」

照井「伏黒の曲の中で、狂気に寄せた曲があります。その曲は自分が今までやってきた音楽のエッセンスを上手く持ち込めたのかなと思っていて、自分の担当曲中では結構、気に入っていますね。今回、僕の担当曲はバトルの曲が多かったので、わりとストレートにかっこよかったり、緊迫感があったりする感じなのですが、その曲はバトルでありつつ変化球で。よりディープな、狂った感じが表現できたかなと思っていて。もし作中で使っていただけたら、どういう風に映像にハマるのかなと、今から自分でも楽しみです。」

ーー桶狭間さんはいかがですか?
桶狭間「先ほども少しお話しした、画合わせをしたバトルシーンの曲ですね。ネタバレになってしまうので詳しくは言えないのですが、後半のほうで“術式”が放たれるシーンがあり、そのシーンは朴監督から事前に「画合わせで曲をお願いしたい」と依頼されました。監督みずから画合わせにしたいとおっしゃるくらいだから、きっとすごい画ができあがってくるんだろうなと、勝手に想像しています(笑)。」

ーー後半、クライマックスのバトルですね。
桶狭間「そうですね、私もどんな画がくるか楽しみにしているので、みなさんもぜひご期待ください。」

ーーありがとうございました。では最後にファンへのメッセージをお願いします
堤「作品世界を引き立てつつ、強く印象に残る音楽が仕上げられたと思います。この先、物語も音楽もさらにディープになるのでお楽しみに!」

照井「第1話を観て、原作ファンの期待を裏切らないクオリティだと感じました。音楽も、われわれ3人の個性が活かされた今までにないものになっているので、ぜひ最後まで楽しんでください。」

桶狭間「原作のファンもはじめて作品に触れる人も、どちらも楽しめるアニメになっていて、さすが朴監督だなと思いました。私たち三人が力を込めて作った音楽も、一緒に楽しんでいただければ嬉しいです。」


<TVアニメ『呪術廻戦』作品情報>
毎週金曜日深夜1時25分よりMBS/TBS系全国28局ネット“スーパーアニメイズム”枠にて放送中‼
少年は戦う―― 「正しい死」を求めて
辛酸・後悔・恥辱
人間が生む負の感情は呪いと化し日常に潜む
呪いは世に蔓延る禍源であり、最悪の場合、人間を死へと導く
そして、呪いは呪いでしか祓えない
驚異的な身体能力を持つ、少年・虎杖悠仁はごく普通の高校生活を送っていたが、
ある日“呪い”に襲われた仲間を救うため、特級呪物“両面宿儺の指”を喰らい、己の魂に呪いを宿してしまう
呪いである“両面宿儺”と肉体を共有することとなった虎杖は、
最強の呪術師である五条悟の案内で、対呪い専門機関である「東京都立呪術高等専門学校」へと編入することになり……
呪いを祓うべく呪いとなった少年の後戻りのできない、壮絶な物語が廻りだす―

<STAFF>
原作:芥見下々(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希・木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明・照井順政・桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA

オープニングテーマ:Eve「廻廻奇譚」(TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」(MASTERSIX FOUNDATION)

<CAST>
虎杖悠仁:榎木淳弥
伏黒恵:内田雄馬
釘崎野薔薇:瀬戸麻沙美
禪院真希:小松未可子
狗巻棘:内山昂輝
パンダ:関智一
七海建人:津田健次郎
伊地知潔高:岩田光央
家入硝子:遠藤綾
夜蛾正道:黒田崇矢
五条悟:中村悠一
東堂葵:木村昴
禪院真依:井上麻里奈
三輪霞:赤﨑千夏
楽巌寺嘉伸:麦人
吉野順平:山谷祥生
夏油傑:櫻井孝宏
漏瑚:千葉繁
花御:田中敦子
真人:島﨑信長
両面宿儺:諏訪部順一



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©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会