レポート:「私は多分、幸福だ。」ひとりしばいvol.11下野紘「ラルスコット・ギグの動物園~狂った象のクレバオーヌ~」ゲネプロレポート

今回の「ひとりしばい」の作品は、「ひとりしばいvol.11下野紘「『ラルスコット・ギグの動物園』~狂った象のクレバオーヌ~」が上演されました。今回の物語は、主人公の象・クレバオーヌの記憶を中心に物語が形成されています。

時間となり、舞台が始まると、象のクレバオーヌが登場するやいなや、ラルスコット・ギグの動物園に空襲が起こりそこから物語が始まります。今回の主人公であるクレバオーヌは年老いた、嫌われものの象の物語。

明くる日の朝、クレバオーヌは檻から出してくれと叫ぶ。しかし、どうして檻に閉じ込められているのかが分からず、太陽の名前は思い出せても、自分の名前が思い出せない。クレバオーヌは気付く。檻の中に文字が散らばった所で目を覚まし、文字で記したこととは、絶対に忘れたくないことがある。命に代えても忘れたくない事。

元々、クレバオーヌは国家の友好の証として、母国から相手国に贈られたものであり、相手国のラルスコット・ギグの動物園にやってきたはずだったが、送られている最中に母国と相手国の国交が断絶状態になってしまったため、ラルスコット・ギグの動物園で着いた早々に子供たちに石を投げられる「憎き敵国からの怪物め」と言われていた。

ある日、動物園で昼間に黒ずくめの男と少女がクレバオーヌを見ていた。そして、クレバオーヌは贈られた国の奴らを喜ばせるために覚えた歌を切なく歌い上げる。

夜遅くに歌っていると、昼間に見かけた少女が現れる。少女はズズと名乗り、昼に一緒にいた男は盗賊の頭領で、クレバオーヌを盗む計画を話し、その日はズズも立ち去る。

翌日、クレバオーヌは気持ちが煮え切らない。そうこうしている間にズズが現れて、一緒に逃げてとクレバオーヌにお願いをする。そして、動物園の地下道からズズとクレバオーヌは逃げ出す。地下道から抜け出ると、街を見下ろす高台に出て、クレバオーヌは生まれて初めて見た外の世界の美しさに思わず見とれる。クレバオーヌは世界の美しさを知り、自分自身を知り、心から笑った。

そして、クレバオーヌとズズは、ズズのいた盗賊団が奪った金品を、様々な村を回って、返して回った。クレバオーヌとズズの旅は七日間。全ての金品を返し終わると、クレバオーヌがズズになぜクレバオーヌを盗んだのかを尋ねる。ズズは似た者同士と話し、クレバオーヌもその言葉に嬉しく思っている様子だった。

夕方になり、クレバオーヌは読んでいた記録を読み、記憶が一部戻ったものの、記憶を取り戻すために再度記録を読み直す。ズズは両親と再会し、この時のクレバオーヌとは別れたものの、また迎えに行くとズズは約束する。

ただひたすらズズを待つクレバオーヌ。まだ来ないかと待ち侘びていると、再び空襲が。空襲の炎を見て、クレバオーヌは思い出す。

あの夜、浜辺で銃声がした。松明の炎をメラメラとさせた盗賊団が現れ、彼女は両親に引き取られていなかった。ズズは盗賊団にやられて、そこで死んだ。ズズが殺されたことにクレバオーヌは大暴れをして、盗賊団を倒し、狭い象舎に戻された。現実を思い出し、悲しみに暮れるクレバオーヌ。クレバオーヌの過去は未来を騙していた。ズズを幸せに出来るのは自分しかいないと。

檻が押せば壊れる。他の動物たちも空襲で悲鳴を上げている。炎の光景を見て、全てを思い出した。クレバオーヌはここで死ぬのも良いのではないかと思う。しかし、他の動物たちの声に影響され、檻を壊して、動物園の外に出て、他の動物の檻も壊す。

リスのモルがクレバオーヌに話しかけてきて、モルは「クレバオーヌは100年生きた。」という噂話や、クレバオーヌはモルの大切なララを探しに行くべきだと話す。クレバオーヌがしてこなかった後悔をさせないために。

モルと話し終わった後、クレバオーヌは空襲の混乱の中で、クレバオーヌの母国の旗がなびき、兵隊に国に返してくれないかとお願いをするが、銃撃で追い返されてしまう。

夜になり、クレバオーヌ自身は思い出せなかったが、ズズは覚えていたいと願うクレバオーヌ。しかし、厩舎の張り紙は何だったのだろうか?果たしてそれも現実だったのだろうか。ズズが存在したとして、ズズは私を売り払おうとしていたのかもしれない。どっちでもいい。「私は多分、幸福だ。」なぜなら、私の中には愛が溢れているからだ。ズズを忘れないと誓い、寝むってしまうクレバオーヌ。

微睡のさなかか夢かうつつかで、まだズズの事を覚えていると力強く声をあげるクレバオーヌ。どこからともなく現れた動物園の動物たちがクレバオーヌのために歌ってくれている。

そして、ズズも現れ、クレバオーヌにドン臭いと言い、クレバオーヌもズズが現れたことに喜び、動物園の皆が歌ってくれている事を喜び…。そして、クレバオーヌとズズがどうなったか。ここで舞台が終わります。


今回の舞台では、下野さんが一つは象という動物の役と、もう一つは老いた役について、新しい下野さんの一面が見られたと思います。役としての広がりは、今後の下野さんの演技で楽しみな部分だと思います。役としてはタイトルでは狂気の役でしたが、本来の優しい一面については、普段の下野さんの雰囲気も感じさせられました。この役は、下野さんだから演じられたと言っても過言では無いと思います。

それに加え、普段のイベントで朗読劇は数多く見られると思いますが、今回のような60分一人での本格的な舞台はなかなか見る事が出来ないと思います。今後も可能であれば他の役者と絡みのある舞台でも演じて欲しいなと感じました。


<『ラルスコット・ギグの動物園』公演概要>
タイトル:ひとりしばい vol.11 下野紘 『ラルスコット・ギグの動物園』
公演日程:2020年11月28日(土)18:00~
出演:下野紘
作・演出:末原拓馬

タイトル:ひとりしばいvol.12 福圓美里 『ラルスコット・ギグの動物園』
公演日程:2020年11月29日(日)18:00~
出演:福圓美里
作・演出:末原拓馬

タイトル:ひとりしばい vol.10 佐藤拓也 『ラルスコット・ギグの動物園』
公演日程:2020年11月27日(金)19:00~
出演:佐藤拓也
作・演出:末原拓馬

会場:Theater Mixa/Zoom
観劇チケット料金:S席:6,500円(税込) A席:5,500円(税込)
配信チケット料金:各回3,000円(税込)

主催:舞台「ひとりしばい」製作委員会
企画・製作:講談社/Office ENDLESS

公式HP:
http://officeendless.com/sp/hitorishibai

公式ツイッター:
https://twitter.com/hitoshiba2020
ハッシュタグ「#ひとしば」


<『ラルスコット・ギグの動物園』物販情報>
ラインナップ:
・公演パンフレット 2500円(税込)
・個人ブロマイド3枚組 Aセット/Bセット 各600円(税込)
・ランダムブロマイド 全15種 1枚200円(税込)

販売箇所:
〇OfficeENDLESS公式オンラインショップ
パンフレット:
https://officeendlessshop.stores.jp/items/5fbcee2df0b10835989accf4

ブロマイド:
https://officeendlessshop.stores.jp/items/5fbceede72eb466e28a51913

ランダムブロマイド:
https://officeendlessshop.stores.jp/items/5fbcf17fb00aa377c69743e4

〇アニメイト池袋本店【販売期間:11月27日(金)~12月31日】

©舞台「ひとりしばい」製作委員会