レポート:第34回東京国際映画祭「ジャパニーズ・アニメーション」部門から考える日本のアニメーションの定義とは?

2021年9月28日、東京都内において、「第34回東京国際映画祭」ラインナップ発表記者会見が行われました。

今回のラインナップ発表記者会見で「ジャパニーズ・アニメーション」部門が発表されましたが、2018年、2019年、2020年と今年2021年の違いについて、見ることにします。

2018年までの東京国際映画祭は、一般的な日本人が思い描く、一コマ一コマを描くアニメーション映画の上映も多く、これこそが「ジャパニーズ・アニメーション」と言えたのではないでしょうか。新作の上映も多く行われていました。

しかし、2019年については、2018年と比べて、新作の上映が激減し、今回の2021年の東京国際映画祭で定めている「ジャパニーズ・アニメーション」部門の特撮が増えていることに気づきます。また、アニメについても新作ではなく、旧作が多いのも特徴だと思います。

2020年については、アニメの新作も若干ですが、上映件数も増えていると思います。この時期は新型コロナウイルス感染症の影響もあって、減っている可能性もあるので、この回については一概に言えないと思います。

しかし、2021年については、アニメもありますが、どちらかというと、特撮の作品が多く目立ち、果たしてこれが「ジャパニーズ・アニメーション」と言えるかは疑問です。

なぜ、新作のアニメーションの上映が減ってきているのかという話ですが、アニメ業界関係者に複数人聞いた感じでは、一般的なアニメの映画は予算が少なく、宣伝として東京国際映画祭に出品することは当初から検討されていないという話も伺えました。

また、特撮が増えているのは、東京国際映画祭では、日本のアニメ以外は基本的に実写映画のみなので、実写を中心としたい東京国際映画祭側の考えがあるかもしれません。特撮については、映画会社が作っていることもあり、東京国際映画祭にも出品しやすいのも影響しているかもしれません。

日本の映像ビジネスにおいて、実写よりもアニメーションの方が海外でも知名度や人気があるのは確かであり、東京国際映画祭においても、アニメーション映画祭になって欲しいわけではないですが、話題性の面から言えば、アニメーションもそれなりのボリュームを持って上映する方が良いのではないでしょうか。

今年の第34回東京国際映画祭の「ジャパニーズ・アニメーション」部門では、アニメーションと特撮を同一視して、カウントしていますが、アニメファンの人から見て、これで納得いく分類でしょうか。アニメと特撮を好きな人は同じかもしれませんが、ジャンルは異なると思います。むしろ、「ジャパニーズ・”トクサツ”」と新しく分類するのも一つではないかと思います。

今の日本でアニメーションの定義を理解する場合は、AnimeJapanというアニメ業界が横断して行っているイベントを知っておくと良いと思います。そこでのアニメーションの定義では、特撮は流石に入ってなかったと思います。となると、特撮をアニメーションに加えるというのは、東京国際映画祭側の基準になると思います。あまり、他の業界団体で受け入れていないルールをねじ込むのはちょっと違う気がします。

現在の状況について、東京国際映画祭に出展されたアニメの作品数が少ないから、こういう結果になっているだけであって、作品が増えた暁には、「ジャパニーズ・アニメーション」部門は本当に今の日本を代表するアニメーションの部門として、展開して行って欲しいと思います。極端な話、AnimeJapanの中でミニ東京国際映画祭ということや、東京国際映画祭の中にミニAnimeJapanという形で交流が出来、コンテンツを上手くサイクルして欲しいと思う所です。開催日がちょうど半年ほどずれているので、行うとしては良いタイミングではないでしょうか。

それが難しい場合は、どこかの国内の地域に手を挙げて頂いて、○○アニメーション映画祭として、分類するのが良いのではないでしょうか。世界のアニメの中心地と言っても過言ではない日本で、世界に誇れるアニメーション映画祭がないのは寂しいことではないでしょうか。


因みに、第34回東京国際映画祭の「ジャパニーズ・アニメーション」部門については、

〇2021年。主人公の背負うもの
・「犬王」(特撮)

©2021 _INU-OH_ Film Partners
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・「漁港の肉子ちゃん」

©西加奈子/幻冬舎 ©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
©西加奈子/幻冬舎 ©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
©西加奈子/幻冬舎 ©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
©西加奈子/幻冬舎 ©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会

・「グッバイ、ドングリーズ!」

©Goodbye, DonGlees Partners
©Goodbye, DonGlees Partners
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・「フラ・フラダンス」

©BNP, FUJITV/おしゃれサロンなつなぎ
©BNP, FUJITV/おしゃれサロンなつなぎ
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〇アニメーター・大塚康生の足跡
・「じゃりん子チエ」
・「記録映画『飄々〜拝啓、大塚康生様〜』」(実写)
・「わんぱく王子の大蛇退治」

〇「仮面ライダー」の未来へ
・「仮面ライダー」(特撮)
・「仮面ライダーBLACK」(特撮)
・「仮面ライダーW(ダブル)FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ」(特撮)

これらのラインナップに加え、TIFFマスタークラスでは、関係者を招いて行われる予定もある。TIFFマスタークラスについては、「2021年、主人公の背負うもの」、「アニメーター・大塚康生の足跡」、「仮面ライダーの」未来へ」のテーマが予定されています。


第34回東京国際映画祭
開催期間:2021年10月30日(土)~11月8日(月)
会場:日比谷・有楽町・銀座地区

公式サイト:
https://www.tiff-jp.net

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