インタビュー:新木「周りに支えられているから」新木さんの芸名を変えられてからの心の変化は?舞台『モノノ怪~座敷童子~』合同取材会レポート

新作舞台『モノノ怪~座敷童子~』が2024年3月21日(木)-24日(日)まで東京・IMM THEATER、3月29日(金)-31日(日)まで大阪・COOL PARK OSAKA WWホール、凱旋公演で4月4日(木)-7日(日)まで東京・IMM THEATERで行われます。

今回は、舞台を前に、主役・薬売り役の新木宏典さんが合同取材に応じて頂けました。舞台前ですが、前作を演じたからこそ感じる作品の世界観や、前作の舞台では「荒木宏文」さんでしたが、40歳の誕生日を機会に「新木宏典」さんに改名されて、誕生日から今日までのお仕事の変化や自身の強みについて、語って頂きました。


Q.第二弾の公演を前に迎えられた今の気持ちを教えてください。
新木さん:
第二弾が出来るのは凄く有難いことで、それは第一弾があっての結果です。第二弾を打てるような結果で、第一弾を終えたのが有難いなと率直な感想です。

第二弾の続編を作るというのは、初めての公演を作るよりハードルが高いと思います。(第一弾と同じだと)品質としては落ちていると思われてしまう。これはどの仕事でも同じ現象が起きるのを考えた時に、第一弾は飛行船シアターでやって、アニメ『モノノ怪』が舞台化されるということで話題性がありました。

今回は、そこまで新鮮味を持つことは難しいのですが、今回は(劇場の)規模が大きくなり、周りの期待値も高いと思うので、前回同様とは行かないかなと思っています。

ただ、今回は一つの場所でやるわけではなく、旅公演なので、旅に持って行ける作品でないと行けないという事で、劇場の特性を生かした作品を作るわけでは無いです。前回の飛行船シアターは劇場に個性があったので、そこでやるのをイメージして出来ていたと思うのです。

今回は旅公演。旅に持っていける作品を作るという所を考えると、別のハードルがあります。前回同様は出来ないし、どこでも見せられる作品にしなければならないのです。単純なイメージでいうと、持ち運び可能なものになると、(舞台装置が)コンパクト化されて、作品の規模が小さくなったと思わせるのが懸念している所だと思いますし、そう思わせてはならないと思います。クリアしないといけない課題だと思います。

Q.今回の舞台で行われる舞台『モノノ怪~座敷童子~』のエピソードについてのご感想は?
新木さん:
舞台『モノノ怪~座敷童子~』の感想は、舞台『モノノ怪~化猫~』の時に思ってイメージを持ったのが『モノノ怪』の「座敷童子」のエピソードだったので、そのイメージで挑んだのが舞台『モノノ怪~化猫~』だったんです。

『怪~ayakashi~』の「化猫」をやるのかい!と思っていて、一番僕が『モノノ怪』という作品の中で素敵だなと思った、最初に見た時の衝撃を受けたのが『モノノ怪』の「座敷童子」の話だったのです。僕の中ではThe『モノノ怪』でした。

Q.衝撃を受けたのは作画ですか?エピソードですか?
新木さん:
僕がアニメ『モノノ怪』を好きになったのは、色彩感覚です。色の使い方が綺麗だった。視覚的情報が凄く華やかで、幻想的でありながら、僕が日本人として育ってきたからかもしれませんが、馴染みのある色を使われていたという所が、凄く僕がアニメ『モノノ怪』を好きになった理由でもあります。

これが味わいある作品だったので「これを舞台に?」という事、しかも映像に頼れない所で、僕が魅力に感じた所は舞台化するのは凄く難しいのではないかと思うので、どういう風に見せることになるのか凄く楽しみにしています。

Q.ストーリーについてはどうですか?
新木さん:
ストーリーに関しては、何となく僕は受け入れられちゃっているんですよね。「昔そうだった。酷いよね。」ではなくて、「昔はそうだっただろうね。昔の事だもんね。今と違うもんね。」と思うので、フィクションでありながら、そういうことが起きていてもおかしくない時代だったんだろうなと受け入れられちゃうんです。その中でも傷付く話でもありますし、命が関わってくる話ですし、不運を感じてしまうのです。

『モノノ怪』の作品の特性として、人間の汚い部分や、隠したいと思う本心の部分、本音の部分、人間の私利私欲を出した結果、出てくる問題が一つ一つテーマになっているのかなと思っているし、テーマが重く感じすぎることはあるのです。ここを重く感じすぎる事は、舞台『モノノ怪~座敷童子~』をするにはリスクが大きすぎると思うので、あまり具体的に見せすぎるのが正しいのかどうかと悩んでいる部分かもしれません。フラットに受け入れられるか、僕にとっては必要かなと思います。お客様については、受け取り方や考え方が違うと思うので、僕は冷静に受け止めないといけないと凄く感じています。

Q.役の解釈について教えて下さい。
新木さん:
物語を産んで作っていくのは、僕の周りの人たち(スタッフ)であって、でも舞台『モノノ怪』の看板を背負うのは僕であり、薬売りというキャラクターなのです。僕の手の届かない所で作品が評価され、作品が悪ければ僕が傷付き、作品が良ければ僕の評価が上がるというか、凄く他力本願だと思っています。でも、良かった時に僕の評価が上がろうが下がろうが、僕が答えられるのはカンパニーのみんなで作ったものだと発信できるので、ここはフォロー出来ると思います。

でも、自分が薬売りをやる上で、覚悟していることは、作品のクオリティが悪くても、僕の名前が傷付く。ここに関しては、言い訳も出来ないし、受け入れなければならない事です。それは物語を産んでいるキャラクター達とお芝居と表現にかかった部分だと思います。それもすべてカンパニーの雰囲気だったり、作品の取り組みだったり、コントロール出来なかった座長の責任だと受け入れる覚悟は持って無いといけないなと思っています。

Q.役の膨らませ方について、教えてください。
新木さん:
裏設定やアニメーションで説明されていない部分は、原作監修の方々から教えて頂くこともあれば、教えて貰ってないこともあるので、そこは(任せられた所は)空白でいられるように、どう色付けていくかは、表面的な色を付ける所は、凄く考えている部分ではあります。

Q.役で意識したことはありますか?
新木さん:
前回から考えてきたのは、(声優は)アニメならではの声を使われていると思いました。それはマイクが近くにあるのと、カット割りによって、(キャラクターの)表情が読み取りやすいし、空間を認識しやすい引きの絵があります。でも、言葉を発しているのは、凄く近くにマイクがあって、繊細に鮮明に音声を録ってくれる環境があり、その雰囲気とかも無音で成立する演出で構成されているから、成立するのですが、舞台になると、定点カメラで見ているような感じになるので、舞台からは遠いです。セリフでの表現、生の距離感で、マイクは付けているけど、身体で表現しないといけない割合が濃くなってしまう。

その動きをしている人間の発している言葉の違和感をどう無くしていくかと考えると、声優の方が当てたセリフ回しや声色を、なぜそういう風にアプローチしようと思ったのか。取り組みにある根本的な部分を舞台版にシフトチェンジしないといけなかったので、なぞるのではなく、本質を探ることを考えた部分ではあります。これは声に関した話ですが。

今回も(前回とは)また変わってくると思います。あれは、あくまで『怪~ayakashi~』の「化猫」の時の薬売りになって、アニメ『モノノ怪』になってからのセリフ回しがまた違ったので、今回も考えたいなと思います。

Q.脚本は読みましたか?
新木さん:
はい。凄く親切になったと思います。前編・後編の2話を使って、アニメは30分1話で構成されているので、本編で言えば50分位の尺ですが、舞台だともっと長く出来るので、それを丁寧に説明することが出来、シーンを足すことが出来ます。『モノノ怪』の特性・個性として、多くを語らない。だからこそ見ている人が憶測を立てて、より深みを足せる。

視聴者が作品を愛すれば愛するほど深読みしてくれる。作品の深さが出されると思うのですが、そこも答えを出されるにつれて、あれ、そうだったんだと具体的になり、考える範囲が狭まるので、深みというのは、親切になればなるほど見ている人の出す答えって、深堀しづらいと思っています。

そういう意味では、知らない人が見ても分かりやすいと思うと同時に、考察するその範囲が狭まっていると思います。どちらとも、これは好みの話だと思いますが、情報としてはリアルタイムでアニメを見たり、配信サービスでここ最近アニメを見たりした方々が感じたことの答え合わせをするには、(脚本の)高橋先生が書かれているからこその答え合わせに舞台『モノノ怪』が好きな方には良いんじゃないかなと思います。初見から見る人はこれだけ親切に分かりやすく舞台『モノノ怪~座敷童子~』の話を知ることが出来るのではないかなと思います。そこはすごく大きなメリットだと思います。

Q.コロナ明けに芸名を変えられましたが、変化したことはありますか?
新木さん:
改名して変わったこととして、(芸名に)変えたくて変えたんです。これは40歳という年齢を機に、40歳を向かえるにあたって、自分がずっと30代、38歳、39歳の時に考えていたことなんです。40歳を迎えてから自分の役者としてのあり方を悩んでいた部分がありました。

環境も凄く整っているし、デビューしてからずっとお世話になっているプロダクションにずっと所属して、事務所も変わってないし、ずっと仕事もコンスタントに出来て、人脈もコミュニケーション取れる人達がどんどん増えて、それで年も重ねて、大人になってくると、立場が上に上がってきます。

環境は凄く整ってきているけど、「荒木宏文」という単体の役者を見た場合に「ここ」を築き上げたものに甘えて生涯終えるまで、この役者を続けることを考えた時に、無理だと思いました。それなので、甘えることなく「荒木宏文」の名前に甘えることなく、40歳からもっと必死にやっていかないと、この先の未来が無いなと思ったから、すべてを手放す0からスタートする覚悟で、やっていかないといけない。そういう所で、自分に負荷(改名)をかけたのが理由です。

変えたんですが、やっぱり0になることは無いですし、今まで一緒に仕事をしてきた方々からすると、応援して下さる人たちが多いので、だから有難いことにこのタイミングで名前を変えるから、じゃあここから名前の表記を変えましょうね、と稽古していて本番をしていると変えるタイミングが難しいのですが、それを事前にご相談させて頂いて、ちゃんと協力的に変えてくれ、明治座に立たせて頂いた時も、本名で立たせて貰って、「今度は芸名だね」と、両方、本名でのぼりを立たせて頂いて、芸名ですぐにのぼりを出して頂いていた時も、そういうところでは大変お世話になりました。

名前が変わると認知されないですね。舞台『モノノ怪』のチラシが出た時に本名の荒木宏文で出ていると「あの人」となるけど、「新木宏典(あらきひろふみ)」と読むのすら難しいこの字で名前だけ出されてもピンとこない人がいる中で仕事をすると話題性になるのが凄く難しいです。

名前に頼ることが出来ないと思いながらも、そこまで停滞することなく、むしろ名前を変えたから「どんどん頑張っていこうよ」となっているマネージャー陣もそうですし、そういう説明を聞いた上で、「凄いね」となって、「また一緒にやろうよ」となって仕事を振ってくれる方々がいるので、周りに支えられて、結果停滞することなく、むしろ幅広いジャンルに活動できています。

変わったところで言うと自分自身に負荷をかけたつもりだったのですが、周りも一緒に負荷を感じて、そこに負けないようにエネルギッシュになってくれたところは大きく変わったと思います。

Q.薬売りは特殊能力がありますが、新木さんはこれだけは誰にも負けない能力はありますか?
新木さん:
関わってきた人たちの濃さだと思います。「人脈が広い」であったり、「人望が厚い」であったりです。僕はあまりコミュニケーション力が高くなかったので、人との交流を持ってこなかったし、持つことより自分を磨くのに必死になっていたので、むしろ苦手な方でした。苦手だからこそ、上手く人と繋がることが出来ない。繋がるために時間を費やすし、回数を重ねるので、繋がった人達との絆の深さはコミュニケーション能力が高い人よりも僕の方が強いんじゃないかなと感じます。

僕の考えは、人と違うらしいのですが、考え方とかが、でもそれも言葉が上手い訳ではないですが、伝わるの?ちゃんと伝えられる訳ではないのですが、それでも、汲み取って、理解してくれるのが、付き合いが長かったからこそ出来る事です。

改名とかに関しても、自分の思いをちゃんと理解した上で、そこに協力的になって動いてくれる関係者の方々が沢山いるのが、今の結果に伝わっていると思うので、こういう所は僕ならではの武器になっているような特性だと思います。


■舞台『モノノ怪~座敷童子~』作品情報
<舞台『モノノ怪~座敷童子~』あらすじ>
「私は、どうしても産みたいんです!」
老舗宿に駆け込んだ訳ありの女・志乃は、お腹の赤子のためにどうしても泊めて欲しいと懇願する。
根負けした女将・久代に開かずの間に通された志乃は、居合わせた薬売りと共に奇怪な現象に巻き込まれていく。
薬売りが斬りに来たと言うモノノ怪の正体と、開かずの間に隠された秘密とは?――。


■スケジュール
東京公演・西銘
3月
21日 18:30
22日 14:00 18:30
23日 12:00 16:30
24日 12:00 16:30

大阪公演・西銘、白又
3月
29日 18:30白又
30日 13:00西銘 17:30白又
31日 12:00白又 16:30西銘

東京凱旋公演・白又
4月
4日 14:00
5日 14:00 18:30
6日 13:00 17:30
7日 12:00 16:30


■出演者
薬売り役:新木宏典
志乃:岡田夢以
徳次:西銘駿/白又敦 ※Wキャスト
少年徳次:大平峻也
久代:新原ミナミ
フク:加藤里保菜
ボボ:中村哲人
ステ:⽥上真⾥奈
トメ吉:西 洋亮
イチ/直助:高山孟久
若き久代:井筒しま
ヤス:波多野⽐奈
フジ:藤原ひとみ
モト:⻑島 静莉奈


HP:
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X:
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©舞台『モノノ怪~座敷童子~』製作委員会