レポート:三田「目指したからには本物になりなさい」三田紀房『ボクは漫画家もどき イケてない男の人生大逆転劇』販売記念会見レポート

Q.出版の経緯は?
三田先生:担当編集の方が定年退職をするという事で、先生の本で退職したいと説得されて引き受けました。

Q.過去の作品については?
三田先生:描けそうなものを描いていた。気持ちがあれば大体描けていました。漫画は体力が無いと描けないと思います。

Q.20代の頃、ご実家の洋品店の借金が1億円があることが分かり、兄弟で返すことになった。漫画で返済しようと思った理由は?
三田先生:借金を判明させるのが大変だった。全額ではなく、見えないところがたくさんあって、金融機関から借りてるお金はレシートが来て、返済計画が来るので目に見えて分かるが、洋品店は意外と表に出ないのがあって、それを判明させるのが大変だった。父親に聞いたが隠している所もあり、それを判明させている際、親戚からも言われて、判明させる作業に半年一年、結構時間がかかって、全体像が分かって、リアリティも無いし、その時その時で切迫感はあるが、お金を返しての繰り返しで、返済がどうやってもすりあわないことから、最悪の時も考えてはいました。

Q.30代になって、漫画家になって苦労話はありましたか?
三田先生:デビューして、担当の編集が親身な方で、「何か描いたら送ってください。」と言われて、家で描いて送っていたら、電話で編集から「載せます。」と言われて、デビューして原稿料を頂く生活が早かったんです。奥さんが学校の先生だったのと、田舎だったので、生活は出来ていたのですが、編集から「東京に出てきませんか?」と言われて、上京して、売れるまで相当時間がかかったのと、キャッシュフローが良くないと駄目なんですが、漫画家は売れないと原稿料はアシスタントの人の費用に消えます。

Q.漫画を連載していた際、アンケートで一位になる漫画を描けと編集に言われて研究されたそうですが?
三田先生:連載を続ける場合は、4、5位を保たないといけない。描きたいように描いていると上位に行けない。毎週編集の人が会う際に「1位を」と言われたので、1位を狙わないと連載が終わる恐れがあったので1位の漫画が人気があるのかを研究して、理由を考えて、こうやれば、人は喜ぶのだと思いました。

Q.40代で転機。本当の売れっ子として、週刊連載で2本始められましたが。
三田先生:週刊誌は、体力、気力、根気が無いと描けない。自分の人的リソースを注ぎ込む過酷な作業でした。突然、ヤングマガジンの編集から電話があって、月刊別冊ヤングマガジンで一回描いたら、編集長から「週刊誌でやらない?」と言われて、「ここで返事を逃すと、ヤンマガの週刊誌で描くチャンスは無いな。」と思い、どうやったら、二本描けるかの問題はあったけど、その場で「描けます。」と言いました。週刊誌を2本引き受けたら、どうしたら描けるかを後から考えました。人生の転機でした。

Q.ドラゴン桜を思い浮かんだきっかけは?
三田先生:モーニングの編集から連絡があって、高校教師ものをやりませんか?高校教師ものやりませんか?と何度か言われ、金曜ドラマみたいなのと言ったら、やっぱり高校教師ものやりませんと言われて断られるのですが、もし勉強が得意じゃない子供を東大に1年で入れたら面白いかもねと言ったら、連絡してきた編集は面白いというのですが、新入社員の方が面白くないと言って、あとから聞いたら灘高・東大で東大って意外と簡単なんだよと言われたのがきっかけで、逆の発想で出来ないかなと思いました。灘高・東大の彼がいなかったら、なかったと思います。

Q.印象の残る反響はありますか?
三田先生:読者の方が編集部に問題を解いたと電話応対することがあったのと、問題を書いたら解く人はいるだろうなと思ったけど、答え合わせを教えろというのが来るとは思わなかったです。一方通行ではなく、双方向の漫画も担えるんだなと思いました。

Q.「漫画家もどき」のタイトルについて
三田先生:塞翁が馬も良いが、インパクトが無い。パッと見て、何?とこの本は「漫画家もどき」って何だと思って貰うために、あえてちょっと「?」のタイトルをつけようとしたのが目的です。35年漫画を描いていて、自分はどういう人間かと考えた時に、漫画家だと自信をもって答えられるのかと問われると、意外と漫画家と言えるのだろうかと思いました。日本の漫画家は天才がいっぱいいる。女性の才能の高さ。男女合わせて、物語の絵を作る、総合エンターテインメントを発信している国は、日本が十周くらい先の量の多さだと比べれば、自分でするすると隙間から入り込んで、周りを伺いながら生息するというか、生き続けるか、違う遺伝子が紛れ込んでいる意識があります。

よく考えられるなという人が山といるので、それらからすれば、運良くスタートに着けて、存在感のリアリティを感じていて、浮遊している意識があって、一つのものであるという意識に繋がってるのではないかと思います。本物になれば「目指したからには本物になりなさい。」と決めたら一直線という哲学が日本人にはあり、美徳になっているが、別に本物にならなくても、本物じゃなくても生きられる。スポーツとか実力が目に見える分野は違うが、漫画家は意外とすそ野が広い業界でもあるので、ポジションに向けて、きっといいこともある。本物じゃなくても、それっぽくして生き続けることもあるし、それもいいんじゃないですかと思うのです。


<商品情報>
発売日:2024年3月19日
定価:1760円(税込)
四六判:208ページ
ISBN:978-4-06-532009-9
講談社ビーシー

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